日本人医師がレジデントとして働…
シンガポール日系クリニック勤務の「30人枠」について解説

「シンガポールで医師として働くには、SMC(シンガポール医療評議会)への登録が必要」
シンガポール就労を希望したいる医師であれば、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。しかし実は、もうひとつのルートが存在します。
それが、SMCの登録を経ずに、日系クリニックで診療を行う「特別枠」です。年間に最大30人までに限られているため、俗に「30人枠」と呼ばれています。
本記事では、この30人枠とは何か?誰が対象で、どのようなメリットや制約があるのかを解説します。
目次
日系クリニック勤務の「30人枠」
シンガポール日系クリニック勤務での「30人枠」とは、日本とシンガポール政府間で定めた特例的な制度です。
シンガポール在住の日本人患者に対して、日本語で診療を行う自由診療のクリニックに勤務することを条件とし、年間30名までの日本人医師がシンガポールで就労することができます。
SMC(シンガポール医療評議会)の登録を必要としない代わりに、診療対象が日本人患者のみを扱う自由診療のクリニックに限定されています。シンガポールでの公的医療機関やローカル患者の診療は行えません。
一次情報は、下記の経済産業省のページより確認が可能です。
「2011年版不公正貿易報告書 第Ⅲ部 経済連携協定・投資協定 第3章 人の移動」
勤務に必要な条件
応募条件は、日本国内で有効な医師免許を保持している医師は全て対象となります。専門医資格があれば優遇される傾向にありますが、必須ではありません。
英語力についても、特定の資格の提出等は必要ありません。診療が日本語中心であるため、英語での問診や記録作成などは原則求められないためです。
ただし、勤務スタッフにはローカルの人もいます。シンガポール人スタッフとの会話は英語ですが、業務は日本語であると考えるとわかりやすいでしょう。
メリット
この制度の最大の利点は、SMC登録を経なくてもシンガポールで就労が可能である点です。
シンガポール現地の病院で働くためにSMC登録をするとなると、学歴指定と書類審査、それから英語試験の提出などが求められます。SMC登録に関して気になる人は、下記の記事を参照にしてください:
さらに、自由診療という業態のため、勤務時間や待遇面において柔軟な選択が可能となることもあります。
知人の話によると、一般的には年俸はSGD150K〜170K(1,600〜1,900万円)程度に、毎月の住居手当がSGD4,000(45万円)支給されることが多いようです。
この制度の難しい点
応募要件自体は緩めの制度ですが、難しい点も存在します。それは、年間30人という明確な人数制限です。
シンガポール全体での枠が限られているため、人気のあるクリニックでは常に枠が埋まっており、応募してもすぐには勤務できないことがほとんどです。
事実上、ウェイティングリストが存在しており、多くの医師が空き待ちの状態です。これが意味するところは、通常ルートで病院に応募しても、なかなか枠を取れないということです。
ちなみに、シンガポール最大手の日系クリニックは、ラッフルズジャーパニーズクリニックで、こちらが実質的に15枠ほど確保していると言われています。
終わりに
シンガポール日系クリニック勤務の「30人枠」とは、正規のSMC登録からシンガポールで医師として働くルートとは別の枠であることが理解できたかと思います。
日本人医師であればほとんど誰でも応募対象ではあるものの、コネクションなしでの枠の確保は事実上難しい制度だと考えて良いでしょう。
「30人枠」は、「英語を使わずにまずは海外での臨床経験を積みたい」「家族とともにシンガポールに移住したいが、SMC登録はハードルが高い」といったニーズにはマッチすると思います。
また、日本人患者を中心に診療を行いたいという希望がある医師にとっても、働きやすい選択肢となるでしょう。
この枠を活用したい人は、どのように自分の枠を確保できるかを考え行動することがポイントになります。
最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。何かご質問などあればお気軽にご連絡ください。
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