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外国人医師向けのMTIプログラムを解説 | イギリス

イギリスには “Medical Training Initiative (MTI)” と呼ばれる、外国人医師向けの短期プログラムがあります。

外国人医師が英国で働くには、一般的にはPLABやMRCPのような医師国家試験を突破して、就職活動を行う必要があります。しかし、すでに専門医を取得している方は、このMTIプログラムを活用し英国で臨床を行うことが可能です。

2024年現在のイギリスでは、医師の就職難が起こっています。外国人医師や医学部定員の増加、そして医師と同じポジションとして働ける仕事(CNSやPA)の台頭が原因だと言われています。

そのような背景から、必ずしも正規ルートからイギリス臨床の道を歩むのではなく「まずは働いてみる」という形で、MTIを活用されるケースが増えています。

本記事の情報は、英国王立内科医協会(Royal College of Physicians、通称RCP)の一次情報と、各MTIプログラムの要件を分析を元に書き出しています。

Medical Training Initiative(MTI)とは

MTIは世界中のジュニアドクターを対象とした「英国で臨床を受ける機会を提供するトレーニングプログラム(最長24ヶ月」です。

MTIの目的は、ジュニアドクターと英国国民保健サービス(National Health Service、通称NHS)の双方に利益をもたらすこととされています。

外国人医師が英国で働きトレーニングを受けることで、そこで得た知識と経験を母国に持ち帰ることができます。一方で、NHSや病院に対してはポジションの空席とローテーションギャップに対する、高品質で長期的な代替手段を提供します。

外国人医師と病院の双方に、メリットをもたらすことを重要視しているプログラムです。

MTIを通じて提供される研修内容は、プログラムにより異なります。しかし、一般的には臨床医の資格認定 CCT(Certificate of Completion of Training)に沿ったカリキュラムが基本となります。研修のレベルは、医師の関心や力量、そして受け入れ病院での研修可能分野によって大きく左右されます。

各研修プログラムの開始時には、医師一人ひとりに教育監督者が割り当てられます。この監督者が、医師の24か月間の研修においての具体的な目標設定を支援します。

医師個人の興味や能力、病院の研修環境などを踏まえて目標が決められる柔軟な制度です。

つまり、MTIの研修は標準的なカリキュラムに基づきつつも、個々の医師のニーズやレベルに合わせて、きめ細かくカスタマイズされているのが特徴です。

応募資格について

MTIプログラムの応募要件を確認しましょう。まずは、必須の要件からです:

  1. 英語力の証明:IELTSまたはOETのスコア
  2. 十分な臨床経験:研修1年と専門領域1年を含む3年以上の経験

英語に関しては、IELTS7.5(各セクション7.0以上)またはOET 350(各セクション350以上)のいずれかが必要です。ほとんどの医師にとっては、背景知識でカバーできるOETの方が対策しやすいと思います。

OETについての詳しい解説は、こちらの記事を参照にしてください。

十分な臨床経験には、直近の臨床医経験が求められます。過去5年のうち少なくとも3年間、そして申請の12ヶ月前から申請プロセス中は、実際に臨床業務に従事している必要があります。

次に、プログラムによって必要とされる要件です:

  1. PLAB
  2. MRCPのパート1
  3. 出身国での専門医資格

MTIプログラムは、PLABやMRCPを受験していなくても参加できることが大きなメリットですが、一部のプログラムでは必要です。

ちなみに、私がOETを指導した日本人医師の中でMTIプログラムに参加をされた方は、日本で専門医は取得をしていましたが、PLABは未受験でした。

メリットとデメリット

MTIプログラムのメリットとデメリットについて確認しましょう。まずは、メリットからです:

  • トレーニング機会:臨床、コミュニケーション、リーダーシップスキルの研修と指導を受けられます。また教育監督者の支援のもと、個別の研修計画を立てることができます。
  • 費用軽減:専門資格が認められるポストでは、英語資格以外の要件がなく、渡航前の費用が抑えられます。
  • PLAB免除:出身国の専門資格が認められる場合は、PLABを省略できます。(ただし、PLABの両部門に合格済みか、不合格歴がある場合は対象外)
  • 英国医療実務資格の取得:RCPの12か月以上のポストを修了すれば、専門資格取得に必要なDipUKMPを申請できます。

一方で、以下のようなデメリットもあります。

  • 給与なしのポストあり:一部のポストでは奨学金や出身国の機関からの支援金が必要です。(個人資金は使用不可)
  • ジュニア役職:経験豊富な医師は、英国への移行ルートとしてMTIを選択すると、給与水準が低く、役職もジュニア扱いになります。
  • 永住権・市民権に反映されない:MTI期間の12-24か月は、永住権や市民権取得に必要な5年間の在留要件に加算されません。
  • 出国義務:24か月経過後は出身国への帰国が義務付けられています。

日本人医師にとってのメリットは、英国の医療システムに熟知できることと、そしてコネクションができることでしょう。

狭い業界なのでコネクションをつくっておくことが、後にイギリスで臨床する際に大きな役に立ちます。

応募方法

MTIプログラムに参加する方法は2通りあります。

  1. MTI-Matchプログラムへの応募: 一部の専門分野では、医師に適したポストをマッチングするプログラムがあります。そのような場合は、該当するプログラムに必要書類を添えて応募します。合格すれば、最長12か月かけて適切な職場が割り当てられます。
  2. 先にNHS職を見つけてからMTIへ応募:専門分野によってはマッチングプログラムが無い場合があります。その場合は、直接NHSの公募に応募する必要があります。採用が決まれば、その後で所属するカレッジを通じてMTIプログラムに応募できます。

単純化すると、MTIプログラムの病院探しは、自分の専門協会が斡旋してもらうか、自分でポジションを探すかということです。

最も簡単な確認方法としては、「自分の専門協会名・MTI・apply」と検索をすることで、一般的に該当ページが表示されます。

専門分野によっては、上記2つの方法を組み合わせている場合もあります。MTIプログラムの詳細は各医師会に確認をすることが必須です。

例えば、一部の専門分野はコンサルタントが主になっており、ジュニアドクター向けの研修ポストが少ない傾向にあります。こういった情報も含めて、各医師会から情報を手に入れる必要があります。

MTIプログラムのスポンサーが見つかった段階で、Tier 5ビザの申請が可能です。

また、外国人医師はイギリスの医師会にあたるGeneral Medical Council(GMC)への登録が必須です。GMCに登録する際は、ほとんどの場合がRPC経由ですが、プログラムによっては、NHSを経由する可能性もあります。

まとめ

今回記事で書いた内容をまとめます。

Medical Training Initiative (MTI)とは、

  1. 最大24ヶ月の短期プログラム
  2. 専門医 + 英語資格+経験が出願資格
  3. 各専門協会からアプライが可能

MTIはあくまで2年間の診療機会を与えて、本国に戻るシステムです。一旦の帰国は必須ですが、MTIのときに過ごした施設のLocumやfellowとして、今度はTier2で滞在し、5年間の期間を過ごせば、永住権につながるかと思われます。

英国での臨床経験がない医師にとっては、最初の勤務地を探すのは簡単ではありません。そういった意味では、初めのとっかかりとしてMTIを利用するのは1つの手だと思います。

結局のところ、PLABかMTIかというのは目的次第だということです。初めからイギリス永住権ありきの人で、就職活動に自信がある人などは、PLABから渡英するのも選択肢です。

どの道、GMC登録がないと臨床ができません。MTIプログラムで入国し、専門分野に触れつつ永住に向けた次の計画をたてるのもありかもしれない、という風に捉えていただけますと幸いです。

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