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PLABとMRCPを比較

日本の医学部を卒業してイギリスで働こうとする場合、まず最初にGMC登録が必要です。GMCとは The General Medical Council の略で、イギリスにおける医師の登録を管理する公営機関を指します。

GMC登録のためには、PLABを目指すかMRCPを目指すかの選択肢があります。

これまで「IMG = PLAB」という認識が一般的でしたが、近年はジュニアドクターの就職難が社会問題化しており、「MRCP」のルートを目指す人も増えています。

そこで、そもそもPLABとMRCPにはどのような違いがあるのか。こちらの記事で詳しく解説します。

PLABとMRCPの基本知識

まずは、PLABとMRCPの基本的な情報を確認しましょう。

PLABとは “Professional and Linguistic Assessments Board” の略です。
PLABは英国で安全に臨床を行うための基礎医学知識・臨床推論・安全性を評価する試験であり、語学試験ではありません(英語要件は別途 IELTS/OET)。
MRCPよりも時間と費用がかからず、できるだけ早く英国でのキャリアをスタートさせたいIMGのために設計されています。

一方、MRCPとは “Membership of the Royal College of Physicians” の略です。
MRCPは英国の内科系大学院資格として国際的に認められており、PLABより取得難易度が高く、より多くのスキルとコンピテンシーを証明できます。母国での経験を活かして、ST3以上のポジションに応募する道が開けます。

要するに、MRCPはNHSでより高いレベルからキャリアを始めたい方に向いた資格です。MRCPは元々英国の医師を対象に作られているため、IMGにとってはPLABより難易度が高い傾向があります。

仕事の種類

NHSには以下のようなグレードがあります:

  • 基礎研修(FY1–2)
  • コア研修(CT1–2)
  • 専門研修(ST1+)
  • コンサルタント

PLAB合格によってGMC登録(通常はFull registration)を得ると、FY2相当〜CT1相当の職種に応募することができます。給与は2024/25年時点でおおよそ £32,000〜£43,000 程度で、勤務時間やローテーションにより上乗せがあります。

次にMRCPです。

IMGがMRCPを修了すると、ST3+ に分類されるシニア・クリニカルフェローやレジストラ職からキャリアを開始できます。経験によってはロカム・コンサルタント(臨時専門医)のポストに応募できるケースもあります。

レジストラの給与は 2024/25 年時点で 約 £55,000 から、上級コンサルタントは £120,000 以上になることもあります。

PLABとMRCPの主な違いは、「就くことができるポジション」です。
MRCPを取得することで一般内科・急性期内科など、より専門性と責任の高いポストからスタートできます。

PLABとMRCPの比較

ここから詳しく、PLABとMRCPの試験概要について見ていきましょう。まずは、以下でザッとポイントを紹介します:

PLABMRCP
受験対象IMGシニアドクター
ポジションジュニアポジション
(FY2 ~ ST/CT2)
シニアポジション
(ST3またはそれ以上)
受験費用PLAB1 – £268
PLAB2 – £981
合計 – £1,249
MRCP Part1 – £616
MRCP Part2 – £616
MRCP PACES – £1,202
合計 – £2,434
必要経験卒後1年以上卒後36か月以上
試験構成PLAB1 – 多肢選択問題を180問
PLAB2 – 個別診療を16シナリオ
MRCP Part1 – 多肢選択問題を200問(100×2)
MRCP Part2 – 多肢選択問題を200問(100×2)
MRCP PACES – 臨床課題を5ステーション
受験場所PLAB1 – 世界各地
PLAB2 – イギリスのマンチェスター
MRCP Part1/2 – 世界各地
MRCP PACES – 世界各地
専門医研修FY2 or CT2から開始し、6-8年の研修ST3+のRegistrarから開始。
CESR/Portfolioの専門医登録の道あり。

PLABについて

PLABは「PLAB 1」と「PLAB 2」の2つの試験から構成されます。PLAB 1を終了した後に、PLAB 2を受験できるようになります。

PLAB 1は、180問の多肢選択式の筆記試験です。解答時間は合計3時間。問題には短いシナリオが用意されており、合計5つの選択肢を選ぶ形式です。

PLAB 2は、”Objective Structured Clinical Examination”と言われています。(OSCEとも呼ばれています)

実生活を反映した臨床状況が用意されており、スキルと知識を評価する実践的なアセスメントです。全部で16ステーションあり、1つのステーションに8分間与えられます。間に2回の休憩があります。

PLAB1に合格してから、2年以内にPLAB2を受けなければならないので、注意をしてください!

MRCPについて

MRCPは1日に3時間の試験を2回行います。

パート1、パート2の両方とも多肢選択問題で、各パート100題ずつ出題されます。合計200問に回答することになります。テストセンターでオンライン受験することができます。

PACESは、半日かけて行われる5つのステーションで、受験者の臨床スキルを評価する実技評価です。

各ステーションでは、患者と、2人の試験官から評価を受けます。7つのコア・スキルが評価され、合計8人の患者が登場します。

MRCPパート2を受ける前にPACESを受けることもできますが、一般的にはオススメできません。PACESはかなり難しいため、できるだけ多くのトレーニング経験を積んでから受験することが理想です。

受験会場

PLAB 1は、イギリス国内外で受験が可能です。日本から比較的近い受験会場は、インド・UAE・オーストラリアの3国です。PLAB 2は、イギリスのマンチェスターまで受験をしに行く必要があります。

MRCPに関しては、Part1/2とPACESともに、イギリス国内外で受験が可能です。こちらは、香港、マレーシア、シンガポールで受験をすることができます。PLABと比較をしても、日本在住の人にとっては受験がしやすいのが特徴です。

対策の時期

人によっては、できるだけ早くイギリスでのキャリアをスタートさせたいと考えているかもしれません。

実際に、医学部を卒業後、すぐにPLAB対策を始められる方もいます。近年は、医学部在学中からPLAB対策をする人も珍しくありません。

一般的には、PLABの各試験の準備には、少なくとも半年はかかります。PLAB2の臨床試験に臨むまでに、少なくとも1年間の医療経験を積むことをオススメします。

結局のところ、PLABに合格するということは、英国のFY2の医師(日本の研修医2年目)と同じレベルになるということであり、確固たる準備があって初めて実現が可能です。

MRCPは、必然的にPLABよりも時間がかかります。MRCPの受験は、卒業後少なくとも2年経ってから始めると良いでしょう。MRCPパート2とPACESについては、数年の臨床経験が必要だからです。

パート1の準備に1~2年、パート2とPACESの受験までにさらに1年以上はかかります。合計すると、少なくとも3年程度の準備期間が必要ということです。初回試験で合格するためには、これぐらいの期間が必要です。

PLABの方が手っ取り早いかもしれませんが、キャリアのレベルや給料の面でスタート地点が低くなる可能性があることを覚えておいてください。

コンサルタントへの道

イギリスでコンサルタント(病院勤務医の一番上のポジション)を目指されてる方も多いかと思います。

PLABまたはMRCPのいずれかを取得し、専門医研修を受ければ、選択した専門分野のコンサルタントになれる可能性があります。最も大きな違いは、コンサルタントになるまでにかかる時間です。

GMC登録のためにPLABを取得した場合、研修以外のポジションでジュニアドクターの仕事を始めることができます。英国の医療制度のいろはを学びながら、職場環境に慣れるには最適です。

ST1+2 / CT1+2のいずれかを修了した後、専門分野でST3+を開始し、CCTの取得までには約8年かかります。CCTは、(Certificate of Completion of Training)の略で、コンサルタントとして認定されるための資格です。

MRCPの場合、専門医登録までの道のりは、より短くなります。ひとつは、MRCP修了後、ST3+からスタートできることで、最初の数年間を実質的にスキップすることができます。

また、日本で十分な経験があると認められる場合、すぐに専門医登録ができる医師もいます。具体的には、CCTに相当する、Portfolio Pathwayを利用するというものです。

豊富なエビデンスを用いてPortfolio Pathwayを取得すれば、英国に入国してすぐに専門医登録を受け、最初からコンサルタントになることも制度上は可能であるということです。

まとめ

今回の記事をまとめておきます:

  1. MRCPとPLABはどちらもGMC登録につながる。
  2. MRCPは大学院の資格であるが、PLABはそうではない。
  3. MRCPはPLABよりも取得に時間と費用がかかる。
  4. MRCPはNHSのより上級の役職に就き、より大きな責任と高給を得ることになる。 

PLABとMRCPにはどちらも、デメリットとメリットがあります。

PLABを取得し、卒業後間もなくGMCに登録されるかもしれませんし、MRCPの取得に多くの時間を費やし、専門医研修からNHSのキャリアをスタートさせられるかもしれません。

結局のところは、自分のキャリア目標に沿った選択をすることが重要です。参考になりますと幸いです。

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