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Competent Authority Pathwayとは | AMCの代替手段を解説

Competent Authority Pathway(以下CAP)とは、オーストラリアでIMGが臨床医として登録するための特別なルートです。

通常、日本の医師がオーストラリアで働く場合、Australian Medical Council (AMC) と呼ばれる、オーストラリア版医師国家試験に合格した上で、研修を経る必要があります。

しかし、CAPを利用できる条件を満たせば、AMC試験を受けずしてオーストラリアでの医師登録をすることが可能になります。

記事の内容は以下の一次情報を基本にしています:

https://www.medicalboard.gov.au/Registration/International-Medical-Graduates/Competent-Authority-Pathway.aspx

Competent Authority Pathway

CAPは、医療や研修の水準が高いと認められた国で資格を得た医師に対し、オーストラリアでの医師登録の審査を簡略化する目的で設けられました。

対象となる認定国は、以下の5か国に限られています。

  • イギリス
  • アイルランド
  • アメリカ
  • カナダ
  • ニュージーランド

残念ながら日本は認定国に含まれていません。したがって、日本で医学教育を受け資格を取得した医師が直接CAPを利用することはできません

しかし、日本の医師であっても、上記の国の指定要件を満たすことができれば、CAPを利用することが可能です。

そうすることで、AMCに合格をするよりも、オーストラリアでの医師登録の確率を上げることができるかもしれません。

以下では、CAPが認められている国ごとに、その要件や特徴を説明します。

イギリス

日本の医師が英国でCAPを得るには、医師資格審査機関にあたるGeneral Medical Council (GMC) の評価を経た医師が対象となります。

そのためには、PLAB試験に合格した後、イギリス国内でFoundation Year 1(FY1)と呼ばれる初年度の臨床研修を修了することです。

PLAB試験とは、IMGが英国で臨床研修を行う資格を得るための試験で、医学知識および臨床技能を評価する二段階の試験です。PLABに関しては、こちらを参照

FY1を終えると、GMCから正式な医師登録、General Registrationを得られます。

実際、オーストラリアで勤務する海外医師の中でもイギリス出身者は大きな割合を占めています。イギリスの医療制度はオーストラリアと歴史的につながりが深く、研修システムも類似しているためです。

日本の医師にとっては、英語力などのハードルはあるものの、PLAB合格から研修修了まで比較的短期間で完了できるため、検討しやすいルートと言えるでしょう。

アイルランド

アイルランドもCAP認定国の一つであり、その管轄機関はアイルランド医療評議会にあたる、Medical Council of Irelandです。

アイルランド経由でCAPに該当するには、アイルランドの医学校を卒業し、現地でインターンシップ(研修医年次)を修了していることが基本条件となっています。

アイルランド医療評議会が認定する医学教育課程を修了し、卒業後に少なくとも1年間のインターン研修をアイルランド国内で完遂すると、「Certificate of Experience(研修修了証明)」が発行されます。

アイルランドルートの特徴は、PLABやUSMLEのような追加の統一試験がないことです。つまり、医学部卒業資格自体が知識の評価に相当し、研修修了が経験要件の充足となります。

このルートを利用できるのは、アイルランドで医学教育を受けた場合に限られるため、日本の医師にとっては現実的なルートではないでしょう。

アメリカ

次に、アメリカ経由でCAPに該当するためには、USMLEに合格し、さらに米国内で定められた臨床研修を積む必要があります。

USMLEは米国の医師国家試験であり、Step 1(基礎医学知識)、Step 2 CK(臨床知識)、OET(英語試験)の三段階から成ります。

IMGが米国で臨床研修に進むには、通常これらの試験に合格して、ECFMG認定(Educational Commission for Foreign Medical Graduates)を受けることが必要です。

ECFMG認定を得た上で、米国内のレジデンシーにマッチし、少なくとも2年間の研修を修了することがCAPの要件となります。

ACGME(米国卒後教育認定評議会)に認定されたプログラムで2年間の研修を終えることが条件として明記されている点に注意してください。

USMLEはAMCに匹敵する難易度ですが、試験に関する情報は豊富ですので、対策はしやすいと言えるでしょう。そういった点では、こちらも現実的なルートの一つです。

カナダ

カナダもCAP認定国の一つであり、カナダ医療審議会にあたる、Medical Council of Canadaの資格を経た医師が対象となります。

カナダでの資格要件の中心は、LMCC(Licentiate of the Medical Council of Canada)と呼ばれる資格の取得です。LMCCとは、カナダ版の医師免許試験に合格したことを示す資格です。

評価試験にあたる、MCCQE Part Iに合格し、そのうえで最低12か月の卒後臨床研修(インターンまたはレジデント1年目)をカナダで完了することがCAP要件となります。

必要な臨床研修期間が1年間と比較的短い点は、英国やニュージーランドと共通です。しかし、カナダはIMGに対する受け入れ枠が非常に限られており、実際に海外からレジデントポジションを獲得するのは狭き門です。

言い換えれば、要件自体は明確でも、日本の医師がカナダで研修の機会を得るまでのハードルが高い点には留意が必要です。

そのため、日本人医師がCAP目的でカナダを選択するケースは聞いたことがありません

ニュージーランド

ニュージーランドもCAPで認められる国ですが、他の国々と若干事情が異なります。

ニュージーランドは地理的・歴史的にオーストラリアと密接な関係があり、医師の養成についてもAMCと共通の認証枠組みを共有しています。

そのため、ニュージーランドの医学校卒業者はオーストラリア国内卒業者とほぼ同等に扱われ、特別な審査を経ずに相互に登録できる仕組みがあります。

日本人医師でCAPの対象となるのは、NZREX(New Zealand Registration Examination)という試験に合格し、ローテーション研修を12か月修了することです。

ローテーション研修は、4つの診療科でのインターンシップの計12か月から成り立ちます。

ニュージーランド経由の利点は、試験と研修の流れが比較的明確であることです。NZREXは英語圏での臨床経験がないIMGに門戸を開いており、合格後のインターンポジションも一定数確保されています。

ただし、NZREX自体の競争率や、合格後に研修先を見つける難易度も年々上がっている点には留意が必要です。

日本の医師にとっては、オーストラリアのAMC試験よりも、NZREX経由の方が取り組みやすいという声もあります

まとめ

以上、AMCの代替となる豪州のCompetent Authority Pathwayについての解説でした。

単純化してまとめると、

  • イギリス
    PLAB合格+研修1年
  • アイルランド
    現地大学卒業+研修1年
  • アメリカ
    USMLE合格+レジデント研修2年
  • カナダ
    MCCQE Part I+研修1年
  • ニュージーランド
    NZREX合格+研修1年

日本人医師にとって現実的なのは、ニュージーランド、イギリス、アメリカの3カ国でしょう。

各ルートを経てCAPの要件を満たした後の流れですが、オーストラリア国内での医師登録手続きに進むことになります。

医師としてのProvisional Registration「仮免許」を取得した上で、オーストラリアでの勤務先を確保する必要があります。

その上で、オーストラリア全国の医師登録と規制を行う正式な機関、Medical Boardによる仮登録を経ますが、GPや一般開業医として勤務する場合は事前面接(PESCI)など追加要件が課されることもあります。

そうして、実際にオーストラリアの医療現場で12か月間の臨床経験を行います。無事一年間の勤務を終え、評価が良好であれば、正式な一般医としての登録、General Registrationを申請できます。

General Registrationが承認されれば、オーストラリア国内で独立した医師として働く資格を得たことになります。CAP経由の場合、このGeneral Registration取得までが一連のゴールとなります。

最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。何かご質問などあればお気軽にご連絡ください。

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