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日本人医師がオーストラリアで医師登録するステップ

オーストラリアで働く資格を得るためには、最終的にはAHPRA(オーストラリア健康職業登録機関)に登録(Register)することが必要です。

今回の記事では、AHPRAのRegisterに求められる要件をまとめていきます。

Pathwayについて

オーストラリアとニュージランドの医学部生以外がAHPRAに登録するためには、以下の4つの異なるルートがあります。このルートを “Pathway” と呼びます。

  1. Competent Authority Pathway
  2. Standard Pathway
  3. Specialist Pathway
  4. Short-Term Training in a Medical Specialty Pathway

これらのPathwayは、候補者の資格や経験によって異なります。永住するためには、1〜3のいずれかのPathwayを通る必要があります。(1は現実的ではないので実際は2と3の方法で認可を目指します)

1. Competent Authority Pathway

特定の国で取得された医師資格を持つ者が対象となるPathwayです。イギリス、カナダ、アメリカ、ニュージーランド、アイルランドからの資格が含まれます。候補者はAMCの書面試験を免除され、直接臨床試験に進むことができます。

日本人医師の場合、このPathwayに該当するケースはほとんどありません。

2. Standard Pathway

外国人医師がオーストラリアで登録を目指す場合、最も一般的なPathwayです。AMC(オーストラリアの医療試験)の書面試験および臨床試験の両方に合格する必要があります。

「1. Competent Authority Pathway」に該当しない国の医師資格を持つ者に適用されます。専門医としての資格を持っていない場合もStandard Pathwayを利用します。

3. Specialist Pathway

すでに特定の専門分野で資格を持ち、その専門分野でオーストラリアで働きたい海外訓練医師向けのPathwayです。

候補者は自身の専門分野に関連したオーストラリアの専門医学会からの評価を受け、その専門分野での登録が許可されることがあります。評価プロセスは、その専門分野によって異なります。

4. Short-Term Training in a Medical Specialty Pathway

オーストラリアでの専門医登録を求めていない海外の専門医に対して提供されるPathwayです。短期間(通常12ヶ月まで)で特定の専門的訓練を受けることができますが、このPathwayは将来的な永続的な登録にはつながりません。

しかし、このPathwayでオーストラリアに滞在しつつ、「2. Speaclist Pathway」に切り替えるという手段をとることも可能です。

一見複雑ですが、専門医の資格がない場合は「2. Standard Pathway」でAMCに合格する方法。専門医の資格がある場合は「3. Specialist Pathway」か「4. Short-Term Training in a Medical Specialty Pathway」で医学会から評価を受けることで、晴れてオーストラリアで医師登録をする事が可能です。

英語資格について

どのPathwayを選択したとしても、以下のいずれかの試験で英語力の証明が求められます。

  1. IELTS:OA7.0以上(すべてのセクションが6.5以上)
  2. OET:すべてのセクションがB(350点)以上
  3. TOEFL:94(LR24点以上、W27点以上、S23点以上)
  4. PTE:65(すべてのセクションで65点以上)

参考: English language skills registration standards

AHPRAでは会場で受けるインターネットベースドテスト(IBT)は問題なく受理されるのですが、オンラインで自宅受験できる形式のテストは受け付けていません。その点に注意してください。

IELTS

IELTSは世界中で基準として用いられる最もポピュラーな英語試験の一つです。ライティングに資格資料の描写が含まれる点、スピーキングが対面形式な点が大きな特徴の一つです。

評価は各セクションごとに0から9までのバンドスコアで示されます。

ライティングとスピーキングのトピックが多岐に渡るため、テンプレートの表現で対策がしにくく、英会話が苦手な人にとってはスピーキングで6.5以上のスコアを取るのが鬼門になる恐れがあります。

OET

OETは医療専門職向けに設計された英語試験で、医師、看護師などが専門的な環境での英語使用能力を証明するために受けます。

評価はA(非常に良い)からE(不十分)までのレターグレードで行われます。

IELTSやTOEFLと比べると背景知識でカバーできるトピックが多いので対策がしやすいです。特にライティングとスピーキングはテンプレート表現で乗り切る事ができます。しかし、リスニングで躓く受講生が多く、出題されるトピックが内科や外科に関連する事が多いので、他の専門医の人たちにとっては難易度が一つ高くなる印象です。

TOEFL

IELTSと同様に世界基準で用いられる英語資格の一つです。試験工程の全てをコンピュータで実施します。

総得点は0から120点で、各セクションが30点満点です。

IELTSと同様にトピックが多岐に渡る分、対策しにくい印象です。リーディング以外のスキルでは全てリスニングに関連した項目があるため、リスニングが苦手な場合はかなり大変な道のりになります。特にライティング27点以上の壁は厚く、ここが鬼門になる可能性が高いと思います。

PTE

PTEは主にオーストラリアやニュージーランドで認可されているコンピューターテストです。スピーキングとライティングが一緒に評価される事、テスト結果が短期間(通常5日程度)で共有される事が特徴です。

総得点は10から90点のスケールで評価されます。

トピックは一般的な学術に関する内容が多く、文章の要点や主張を掴むスキルが求められます。また、TOEFLも同様にコンピューターテストの特徴ですが、受験生の声質によっては機械が反応してくれずスピーキングのスコアが伸びないという事例もあるようです。

どのテストが対策しやすいかは一概には言えません。しかし、いずれのテストも基盤となる語彙力・精読力・リスニング力は最低限必要になるので、早い段階からこれらの対策だけでも継続的に取り組むようにしとくと良いと思います。

詳しい英語資格に関する内容は以下を参照にしてください:

参照1:IELTS VS OET
参照2:4つの英語資格に関して

AMC

Standard Pathwayで登録をする時に避けては通れないのが、AMC(オーストラリアの医療試験)です。AMCは以下の2つのテストに分かれています:

  1. 書面試験(AMC MCQ Examination)
  2. 臨床試験(AMC Clinical Examination)

USMLEで言うSTEP1とSTEP2CKのようなもので、知識から対応力までを総合的に評価されるテストです。

1. 書面試験(AMC MCQ Examination)

書面試験は、選択問題形式(Multiple Choice Questions: MCQ)で行われます。

この試験は、医学の知識と臨床的判断能力を評価することを目的としており、医療の基本的な原則や概念、患者管理、診断方法などが試されます;

形式:コンピューターベースで実施される試験で150問の選択問題が出題
内容:内科学・外科学・小児科・産婦人科など、幅広い医学分野から出題
時間:約3.5時間
試験会場:オーストラリア国内外の複数の会場

コンピューターによる試験なので、日本(東京・大阪)でも受験する事が可能です。

2. 臨床試験(AMC Clinical Examination)

書面試験に合格した後、臨床試験に進むことができます。この試験は、実際の臨床環境を模した設定で、患者との対話や臨床判断を行う能力が試されます。

形式:臨床スキルを評価するための実技試験(ロールプレイ)
内容:検査技術・臨床推論・コミュニケーションスキル・専門的な態度などを評価
セクション:16のステーション
時間:読解時間2分・試験時間8分(1ステーション)

ステーションというのは、症例を読み、模擬患者と面接をし、診察をし、上級医あるいは患者にもっともらしい診断名や治療法を説明したりする、一連の流れが行われる部屋のことです。

臨床試験の合格率は約30%と簡単な試験ではありません。

試験内容が変更される可能性もあるので、対策前に必ず以下から最新の情報を得るようにしましょう:

参考:https://www.amc.org.au/wp-content/uploads/2021/03/Clinical-Examination-Specifications-2021.pdf 

まとめ

今回記事で書いた内容をまとめます。

日本人医師がオーストラリアで医師登録するためには、

  1. 専門医資格の有無 + 将来の展望に応じて “Pathway” を選択
  2. English language skills registration standardsに準じた英語力の証明
  3. 各Pathwayに応じた審査

上記のステップを踏むことが一般的です。

兎も角、オーストラリアで求められる英語力を証明することが最低条件として必要になるので、将来的に海外就労を目指している場合はコツコツと英語の学習を続けていく必要があります。

各Pathwayの審査や実際にAHPRAの申請に必要なものなどを今後まとめていく予定です。

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