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イギリスの医師の役職と職務内容を紹介
イギリスの医師の役職名は、日本のそれと異なります。イギリスのNHS(英国の国民保健サービス)で働こうと考えている人は、役職と職務内容を把握しておくとキャリアパスを想像しやすくなります。
移住後にどの役職からスタートするかはもちろん、最終的に目指すポジションもある程度考えていくことをオススメします。
というのもキャリアパスは、現地の就職市場の状況ありきだからです。
この記事では、NHSでの一般的な医師の職位と、その職務内容について説明します。
目次
NHSの医師の役職
さっそく、NHSにおける役職を一覧で確認しましょう:
- ジュニアドクター
- ST3+ドクター
- スペシャリティドクター
- スペシャリストドクター
- コンサルタント
- ジェネラルプラクティショナー
- ローカムドクター
- アカデミックドクター
たくさんありますね。英語の意味を考えると、なんとなくのイメージはつくかもしれませんが、仕事内容までは想像しづらいのではないでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
1. ジュニアドクター
ジュニアドクターは、まだ臨床トレーニング中の段階にあります。日本の対応職位は、研修医(初期臨床研修医)になります。
ジュニアドクターという用語は公式の職位ではありませんが、コンサルタント未満のすべての医師を含む意味合いで、よく使われます。
ジュニアドクターは、さらに以下に分けられます:
- FY1: 基礎研修1年目
- FY2: 基礎研修2年目
- ST1+: 専門医研修
- CT1+: コアレベルトレーニング
FYは “Foundation Year”。STは “Special Training”。CTは “Core Training” の略です。
ジュニアドクターは専門分野を確立し、病院で医師として経験を積むことが目的です。
ファウンデーションイヤー(FY1およびFY2)の職務には、病棟業務やオンコール業務が含まれます。検査報告、退院書類の作成、病棟の一部を担当するなどの業務などがあります。さまざまな病院や部門をロテーションし、NHSの多様な医療環境での経験を積みます。
専門トレーニング(ST1およびST2)は、個々の専門分野に焦点をあてた期間です。
コアトレーニング(CT1およびCT2)は、より広範な分野に焦点を当てています。例えば、4つの異なる医学または外科分野でのローテーションを行います。修了後は、下記で紹介するST3以降のトレーニングに進む前に、1つの専門分野に応募します。
非正規のトレーニングポストもあり、「ジュニアクリニカルフェロー」や「トラストグレード」と呼ばれることがあります。
また、SHO(Senior House Officer)という用語も、ST1/2またはCT1/2レベルの医師を指すために広く使われています。実際に、NHSの求人サイトでも使われている用語です。
2. ST3+ドクター
ST1/2またはCT1/2を修了すると、ジュニアドクターはST3+の役職でトレーニングを続けます。日本の対応職位は、専門医研修中の医師(後期研修医)です。
ST3+ドクターは、「中級グレード」の医師として知られていますが、まだ「ジュニアドクター」の一般的なタイトルの下に含まれます。この段階では、選択した専門分野での高いレベルのトレーニングを開始し、より多くの責任を負います。専門分野によってST3からST8まで様々です。
放射線科のような専門分野では、FYのあとのST1で開始したトレーニングが、そのままST3まで継続されます。一方、外科などの専門分野では、個々の専門分野に進む前にコアトレーニングを先に修了しておく必要があります。
「シニアクリニカルフェロー」や「トラストグレードST3+」などと呼ばれるポジションもあります。これらのポジションでは、主に患者の診療に焦点を当てており、トレーニングよりも診療サービスの提供に重点を置いています。
3. スペシャリティドクター
スペシャリティドクターは、大学院トレーニングを4年間修了し、そのうち最低2年間を選択した専門分野で過ごした医師です。日本の対応職位は、専門医取得直後の医師です。
スペシャリティドクターはST3+レベルに相当します。職務には、患者ケア、研究、そして専門活動が含まれます。
一時的に医学トレーニングから離れたい英国出身の医師や、予測可能な勤務時間やオンコールの少ない職務を求める医師が担当をしています。IMGも、経験を積むためやロイヤルカレッジの資格を取得するために、このポジションを利用する人もいます。
4. スペシャリストドクター
スペシャリストドクターは、2021年に導入された新しいポジションです。日本の対応職位は、専門医資格を持ち、数年の経験を有する医師を指します。指導医や准教授に近いイメージです。
特定の分野で専門的なスキルを持つ上級医師として扱われます。専門的な治療を提供し、意思決定を行う医療サービスを提供します。さらに、他の医師のトレーニングや教育、管理も行います。
実際に、コンサルタントレベルの医師と多くの責務を共有しており、同様の初任給を受け取ります。スペシャリストドクターとコンサルタントの主な違い何か。スペシャリストドクターは、独立診療で働くことや専門登録を要求されないことです。
独立診療を必要としない高給の上級役職であるため、スペシャリストドクターやスペシャリティドクターになることは、IMGにとって人気の選択肢になっています。
5. コンサルタント
コンサルタントは、病院医師の中で最も高い役職です。全ての医療トレーニングを完了し、CCTを取得した後、専門分野で上級医師として働きます。日本の対応職位は、教授、主任医師(診療科の責任者)などです。卒業からコンサルタントになるまでには、少なくとも10年ほどかかります。
コンサルタントは、高い専門知識を持ち、患者に対して専門的な臨床ケアを提供します。さらに、病院内でチームを率い、協力して最高の患者ケアを提供できるようにする責任を負います。
コンサルタントは多職種チームの一員として働き、専門的な臨床ケアを提供すると同時に、必要に応じて患者を他の部門や専門医に紹介します。また、ジュニアドクターの育成やサポートも要求されます。
NHSに慣れていないIMGが、初めからコンサルタントとして働くことはほとんどありません。通常は、CESR(Certificate of Eligibility for Specialist Registration)を狙いながらも、スペシャリストやスペシャリティドクターとして働くことが一般的です。
実際のところ、制度上はIMGがコンサルタントとして働くことも可能ですが、その場合「ローカムコンサルタント」のポストに制限され、固定期間の契約のみになります。
6. ローカムドクター
ローカムドクターとは、非常勤医師、代診医師のことを指します。NHSは多くのローカムドクターを雇用しています。ローカムドクターの目的は、他の医師のシフトをカバーすることです。
医師が産休や病気休暇を取る場合や、病院や診療所で医師がさらに必要な場合があります。そういった場合、GP診療所や病院では、必要な期間だけローカムドクターを雇用します。
ローカムの雇用には3つの選択肢があります:
- スタッフエージェンシー:特定のエージェンシーに雇用され、時間給で働きます。短期間で呼ばれることが多いため、高い賃金をえることができます。
- バンクシフト:NHSトラスト(またはその人材派遣会社)から給料を受け取り、通常の時間よりもわずかに高い賃金を得ます。
- NHSローカム契約:NHSから直接固定期間の契約を提供されるケースです。この場合、一定期間直接雇用され、給料を受け取ります。恒久的な役職ではありません。
ローカムドクターは、人材派遣会社に登録し、英国中のさまざまなローカム役職を探して応募することができます。ローカムの専門性に最適な高給の役職にアクセスするためには、移動が多くなる場合があります。
ローカムドクターは、FY1以上の任意のレベルで働くことができます。ジュニアドクター、スペシャリストドクター、コンサルタント、またはジェネラルプラクティショナー(GP)としてローカムドクターになることができます。役割の性質上、ローカムドクターの職務は非常に広範です。置き換える医師の職務を引き受けます。
7. ジェネラルプラクティショナー
ジェネラルプラクティショナー(GP)の、日本の対応職位は、一般診療医、家庭医(かかりつけ医)です。
NHSには、GP診療からなる広範なプライマリケアの施設があります。すべての人がGPクリニックに登録しており、非緊急の医療状況で最初の接触点となります。このため、GPはNHSにとって重要な役割を果たします。
GPは病院ではなく、英国全土の小規模なクリニックで働き、患者に一般的な医療サービスを提供します。GPは非緊急の一般的な医療状態を治療し、急性および慢性の病気を持つ患者と継続的に関わります。GPが提供する一般的なサービスには以下が含まれます:
- 診断
- 傷の治療
- メンタルヘルスのアドバイス
- ワクチン接種
- 薬の処方
- 紹介
他の役職と異なり、GPは地元の診療所で働くことが多く、必要に応じて患者を病院や専門医に紹介する責任を持っています。
8. アカデミックドクター
アカデミックドクターは、臨床教授、助教、大学病院の医師(研究・教育を主な業務とする医師)にあたります。
NHSにおけるアカデミックドクターは、医学の発展を目的にしています。アカデミックドクターには、アカデミッククリニカルフェローから、教授までさまざまなレベルがあります。
役割はアカデミックドクターの種類によって異なります。教授は主に医学生の教育に焦点を当てる一方、フェローは臨床実験を行います。
まとめ
以上が、イギリスの医師の役職と職務内容の解説でした。
大まかには8つの役職に分かれますが、その中でも呼び名が細分化されていることがわかりました。
現在ロンドンでは、IMGにおけるジュニアドクターのポジションが不足をしています。渡英するタイミングによっては、自分の希望するルートが難しいかもしれません。
自分がどの役職での就職を目指していくか、また将来どこまでの役職を目指すのか、現地の就職市場に応じて考えておくと良いでしょう。
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