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日本人医師がニュージーランドで医師登録するステップ

ニュージーランドは、海外で臨床を目指す日本人医師に人気の国の一つです。

自然環境や教育制度などが魅力的で、将来の子どもの教育を考えている場合に移住先として選ばれる事が多いです。

医師登録をするステップは他国と同様に、ニュージーランドの国家試験に合格する事が一般的に知られている方法です。しかし、現実は国家試験を経由した医師登録が難しいようです。

そういった現場の話などを交えながら、ニュージーランドで臨床するためのステップを紹介していきます。

ニュージーランドで医師になる3つの方法

日本人医師がニュージーランドで医師登録するためには、一般的に以下の3通りのパターンがあります。

  1. NZREXに合格し初期研修にアプライする
  2. (専門医資格がある場合)Postgraduate  Trainingを終了する
  3. オーストラリアで医師登録をする

それぞれ説明していきます。

1. NZREX

NZREXとは、ニュージーランドにおける医療試験です。12ステーションからなる実技試験で、オーストラリアのAMC ClinicalやイギリスのOSCEと同じタイプの試験と考えてください

ステーション数12ステーション
評価項目コミュニケーション、プロフェッショナリズム、文化的安全性、病歴聴取、身体診察、臨床判断、マネジメント
開催地ニュージーランド、オークランド
試験日未定(2024)
申請手続き新規申請者はNZREX1とNZREX3フォームを提出、再受験者はNZREX4フォームを提出
必須要件資格の一次情報源確認と英語能力試験の確認(IELTSまたはOET)
合格率約50~60%(過去5年間平均)

試験日は公表されていませんが、例年3月と9月に試験が実施される事が多い傾向があります。

NZREXに合格するとPGY-1(初期研修1年目)にアプライする事ができ、初期研修が終わると晴れて医師登録をする事が可能です。

このルートが最もポピュラーな方法としてMCNZは公表しています。しかし、以下の2つの注意点から、IMGsがこのルートを経由して医師登録をすることは、かなり再現性の低い方法であると考えられます。

NZREXの注意点① 再受験に関して

仮にNZREXに不合格だった場合、NZREXからのフィードバックが送られてきます。

このフィードバックを受け取らない限り、次のNZREXに受験申し込みができない点に注意してください。

フィードバックの共有に関して、NZREXは明確な期日を公表していません。ケースによっては次の受験申し込み締切までフィードバックが届かず、受験ができなくなってしまうこともあるようです。

参照:This isn’t the way NZ should treat foreign doctors!

NZREXの注意点② 合格後の初期研修ポストについて

晴れてNZREXに合格した場合も注意するポイントがあります。それは初期研修(PGY-1)のポストが空いていないというケースが多発している事です。

ニュージーランドのTimesによると、過去5年間でNZREXに合格した医師のうち85名がまだPGY-1のポストをもらっていないという問題が述べられています。

“The biggest obstacle for an IMG is getting a PGY1 position (intern position with an accredited pre-vocational medical training provider).”

参照:Migrant doctors struggle for work

この問題はそれ以前からもずっと課題とされており、現状もまだ解決の手段が取られていません。

上記の記事では、長い対策を経てせっかくNZREXに合格したとしても、一定期間無職になる可能性が極めて高いと言うことを示唆しています。

これらの理由からNZREXを経由したルートはあまりオススメできません。

2. Postgraduate  Training

もう一つのルートは、専門医資格を取得している医師が直接ニュージーランドの病院からオファーをもらいPostgraduate Trainingに申請する方法です。

Postgraduate Trainingとは現場で働きながら、ニュージーランドの大学院レベルの知識やスキルを身につけていくブログラムです。

最長で2年間のみのプログラムなので、長期的にニュージーランドで臨床を行う場合はVocational Registrationに申請し合格する必要がある点に注意してください。

参照:VOC3 Vocational (specialist) registration

Postgraduate Training申請に必要な要件

Postgraduate Trainingに申請するためには、以下の要件のうちいずれか1つを満たしている必要があります:

  1. 日本を代表して研修に来る場合
  2. 日本で専門医資格のトレーニングプログラムに参加している場合
  3. ニュージーランドが認めたPostgraduateの資格を有している場合
  4. 12ヶ月以上NZ病院で勤務実績がある、又は交換留学プログラムに参加した実績がある場合

現実的に考えると “2” の選択肢、つまり「専門医資格を取得している(又は取得中)」という要件を満たすことが第一の条件になります。

その上で、以下の要件を全て満たします:

  1. World Directory of Medical Schoolsに登録さている大学で学位を取得している
  2. ニュージーランドで病院からオファーをもらっている
  3. 日本で1年以上働いている
  4. ニュージーランドでの研修終了後、日本での雇用が確定している
  5. 英語資格を保有していること

日本の大学で学位を得て、すでに医師として働いている状態であれば “1” “3” “4” の要件は問題ないと思います。

“2” に関してが最も困難で、人口が少ないニュージーランドは病院の数も少なく、ポストに空きがあるかは時期的な運が大きく影響します。

参照:Postgraduate training

病院にオファーをもらう方法

病院にオファーをもらうためには、

  1. CVの作成
  2. 病院に直接連絡をする
  3. (好意的な返信があった場合)インタビュー

上記の流れが一般的です。

CVはできる限り経歴が魅力的に映るように繰り返しネイティブから添削を受けると良いです。

ネイティブから見て不自然な表現があるだけでもネガティブな印象を与えてしまうので、極力自然でかつ丁寧な表現におさまるようにします。

CVができたら各病院に直接連絡を送っていきます。しかし、ほとんどの場合、病院にポストが空いているということはありません。なので1通でも連絡が返って来ればラッキー。返ってこなくても普通だ、という気持ちで作業としてやる事が大切です。

仮に好意的な返信があった場合、人格評価としてインタビューが実施される事が多いです。そこで評価されると、晴れて病院からオファーをもらえます。

必要な英語資格

必要な英語資格は以下のいずれか1つです:

  1. IELTS 各スキル7.0以上
  2. OET 各スキル350点

IELTSはすべてのセクションで7.0以上のスコアを取得。OETはすべてのセクションで350点以上を取得する必要があります。

IELTSはライティングとスピーキングで7.0以上を取得する事が難しく、OETはリスニングで350点以上を取得する事が難しいという傾向があります。

どちらの試験が適しているかは個人の適性や現場の英語力に応じて異なるので、気になる場合は専門の方に相談してみると良いでしょう。

参照:Policy on English language requirements

3. AHPRA

オーストラリアのAHPRAで医師登録ができれば、ニュージーランドでも医師として働く事ができます。

冒頭で述べた研修医のポスト不足の問題に関して、ニュージーランドほどオーストラリアは深刻ではないので最初にオーストラリアで医師として経験を積んでから、ニュージーランドに移り住むという方法も選択肢として一つです。

AHPRAに医師登録するためには、

  1. 英語資格の取得
  2. AMC MCQ
  3. AMC Clinical
  4. 1年間の研修

の4つのステップをパスしていく必要があります。

AMC MCQはオーストラリアの医師試験で、筆記問題が中心。AMC ClinicaはAMC MCQに合格した後に受験できる実技試験です。(NZREXと同じようなイメージです)

一見遠回りのように見えるルートですが、オーストラリアとニュージーランドの2国で臨床できる選択肢がある点を考えるとメリットは多いように思います。

特に病院のポストに空きがあるかは、こちらの努力ではどうしようもない要素なので選択肢が増えることは可能性を拡げることにも繋がるのではないでしょうか。

まとめ

今回3つの方法を紹介しました。しかし、ニュージーランドの初期研修ポスト不足に関しては現状も続いている問題なので、現実的には以下の2つ方法が考えられます:

  1. Postgraduate Trainingを活用する
  2. AHPRAに医師登録をする

いずれの場合も必要になるのは英語資格の証明です。

そのため、キャリアプランとしてニュージーランド(又はオーストラリア)での臨床を考えている場合、英語の資格対策を小さく始めていく事が最初の一歩になり得るでしょう。

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