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英国のポートフォリオ・パスウェイとは | 専門医として働く

イギリスで臨床を目指すにあたり、研修医から始めることに抵抗がある方も多いのではないでしょうか。

特に、長期にわたり日本で専門医として経験を積んできた人にとっては、また何年も研修に費やすのは時間の無駄に感じるかもしれません。

そのような場合は、CESR(専門医登録資格証明)制度を活用するのが一般的でした。実は、2023年11月より、このCESRが、「ポートフォリオ・パスウェイ」という新しい制度に変更されたのです。

この記事では、ポートフォリオ・パスウェイについて、現時点で分かっている情報をまとめていきます。

ポートフォリオ・パスウェイ

新制度の概要

この新制度は、旧CESRと同じく、イギリス内での正式な研修プログラムを受けなくても、GMCの専門医登録が可能です。

このパスウェイで重視されるのは「プロセス」ではなく「成果」です。イギリスで訓練を受けたコンサルタント(上級専門医)と同等の責任を果たせることや、その専門分野で求められる高度な知識と能力があることを示す必要があります。

以前と同様に、専門医としての経験を証明する書類の提出は必要です。しかし、GMCが各専門分野の「実践能力(CiPs)」について、どんな証拠を集めるべきか、より詳しいガイダンスを提供してくれるようになりました。

CESRのように、イギリスと同等の研修プロトコルを歩んできたことを証明する必要はありません。

ポートフォリオ・パスウェイは、GMCと外科系学会が共同で設計したもので、海外の医師がより明確に専門医登録への道筋を見出せるようにすることが目的です。

GMCのウェブサイトでは、以下のような記載がありました。

ポートフォリオ・パスウェイを通じて専門医やGP登録を申請する医師は、イギリスで専門医またはGPとして診療するために必要な知識、スキル、経験を持っていることを証明する必要がある。この制度は、CESR(またはCEGPR)と呼ばれていたものです。政府が導入した法改正の結果、専門医やGP登録を申請する医師からより幅広い書類を受け入れる柔軟性が得られました。」

Portfolio pathway application (formerly CESR)

科による専門員不足を解消するために、法を改正し、プロセスと証拠書類に柔軟性が持たされたと解釈できます。より多くの人にチャンスが広がったと捉えても良いでしょう。

旧CESRとの比較

CESRと違いを確認しましょう。CESRは、海外の医師がイギリスの研修カリキュラムと同等の訓練を受けたことを証明するプロセスでした。

NHSのCCT(研修修了証明書)を取得するまでに経験するものと同じレベルの研修を受けたことを示す必要がありました。

CESRの基本的な考え方は、「イギリスで訓練を受けた上級レベルの専門医と同等のスキル、知識、経験を持っていることを証明する」というものです。

CESRでは、申請者がイギリスのCCT取得者と同等のモジュールを全てカバーしている証拠を求めていました。具体的には、以下の4点です。

  1. 360度評価
  2. 能力開発と計画
  3. 症例の記録
  4. 5年分の患者ファイルなど(数千ページ相当)

どんなに優秀な医師であっても、この方法で専門性を証明しなければならず、くわえて書類に関する公式ガイダンスはとても曖昧でした。

ポートフォリオパスウェイでは、このプロセスが簡潔かつ明確化されたと捉えると、分かりやすいと思います。

ちなみに、CESR-CPルート(CESRベースの証拠提出+3年以上のイギリスでの研修を組み合わせたもの)は、現在も有効の選択肢です。

申請方法について

ポートフォリオパスウェイの、具体的な申請方法について見ていきましょう。

ステップ1:GMCに連絡する

まずは、GMCのスペシャリスト・アプリケーション・チームに連絡を取ることをオススメします。自分の状況に合わせた指示を受けられます。これにより、プロセスがスムーズになり、同時に疑問点の解消が可能です。「迷ったらGMCに連絡」と覚えておきましょう。

ステップ2:GMCに申請する

次に、GMCのウェブサイト上で申請を行います。申請開始から24ヶ月以内に必要な全ての書類を提出する必要があります。申請後、GMCが関連する審査機関(各専門の学会)に申請書を送ります。

ステップ3:アドバイザーの割り当てと書類の提出

最初の審査チェックにパスすると、申請者に担当のアドバイザーが割り当てられます。アドバイザーは提出された書類を確認し、フィードバックを提供してくれます。フィードバックに基づいて、書類を修正します。膨大な書類の翻訳、検証、推薦状の取得などは時間のかかるプロセスです。

ステップ4:評価と決定

GMCがすべての書類を受け取り、確認した後に、自分の専門の学会が書類を評価します。そして最終的な決定が下されます。

複雑で時間がかかるシステムのようですが、以前のCESRシステムと比べると、はるかに効率的で柔軟になっているようです。

証明が必要なスキルとは

特定の書類を集める必要があるわけですが、具体的にどのようなものか、もう少し詳しく見ていきましょう。基準には、共通の5つのCiPs(実践能力)を満たすことが求められています。

実践能力1:外来診療の管理

この能力は、臨床・管理に関するものです。状況に応じた患者とのコミュニケーション、他科への紹介、時間の管理方法などを示す必要があります。

実践能力2:救急患者の管理

部門内での救急患者の管理能力を示します。例えば、患者の全面的な評価、蘇生処置の実施、適切な治療計画の立案ができることの証明などが含まれます。

実践能力3:病棟回診と入院患者の管理

入院患者に対する管理能力を示します。重症患者の識別、病棟での多職種チームの管理、合併症の管理、患者の評価ができることを証明します。

実践能力4:手術リストの管理

手術を受ける患者の管理に関するものです。例えば、適切な患者の手術選択、必要に応じた麻酔の手配、手術のスケジューリング、そして手術の実施ができることを示します。

実践能力5:多職種連携の管理

最後は、多職種チームでのケアが必要な患者の管理能力に関するものです。緊急性の高い患者の識別、管理とプロセスの処理、治療計画の立案、多職種チームとの効果的なコミュニケーションができることを示します。

まとめ

以上が、英国のポートフォリオ・パスウェイについての紹介でした。

この新しい制度の導入により、IMGにとっては、イギリスでの専門医登録がより身近なものになったと言えるかと思います。とはいえ、申請プロセスを通過するには、十分な経験が必要なことに変わりはありません。

すでに、日本で十分なキャリアを積んでおり、イギリスのコンサルタント(上級専門医)と同等の知識やスキルを持つ医師にとっては、特に意味があるはずです。

準備に時間がかけられる人や、イギリスで長い期間はたらくことを目指している場合などは、チャレンジをする価値があるかと思います。

この記事を執筆するにあたって、参考にした一次情報は以下のリンクから確認ができます。

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