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AMC Clinical Examinationの対策方法

前回の記事の続きになります。

繰り返しになりますが、オーストラリアで “専門医資格のない” 日本人医師が臨床を行う場合「スタンダード・パスウェイ」というステップで医師登録を行う必要があります。

スタンダードパスウェイは、

  1. English language skills registration standard(英語資格)
  2. AMC MCQ(筆記試験)
  3. AMC Clinical Examination(実技試験)

大きく分けて上記の3つの試験に合格する必要があります。

今回説明するのは「3. AMC Clinical Examination」の対策方法についてです。

AMC Clinical Examination

AMC Clinical Examination(以下「AMC Clinical」)は、オーストラリア外の医師(IMGs)がオーストラリアで医師としての認定を受けるための臨床スキル実技試験です。

様々な臨床シーンにおいて、適切な対応ができているかをロール・プレイ形式で評価されます。

以下が概要です:

試験内容診療シーンに即した実技試験(全16ステーション)
出題範囲内科外科・小児科・産婦人科・精神科・身体診察
試験時間約200分(1ステーション10分・休憩10分が4回)
試験会場シドニー、メルボルン、ブリスベンなど
合格基準*全16ステーションの内9ステーション合格
受験費用約3,500オーストラリアドル

* 全16ステーションの内2ステーションは評価がされません。そのため14ステーション中9ステーションに合格する事が求められます。

OETのスピーキング試験をよりリアルに再現したような実技試験で、診察時の対応や患者とのコミュニケーションなどが評価されます。

前提として医療語彙や表現など、英語で適切な発音を再現できる状態が合格のために必要になるでしょう。

評価基準

AMC Clinicalは各ステーションごとに評価シートがあり、基本的に2つから5つの観点を7段階で評価します。7段階中4以上であれば合格です。

観点はステーションごとに異なりますが、大きく分けると:

  1. 患者への対応
  2. 適切な問診(鑑別診断)
  3. 身体診察の技術(判断力)
  4. 症状の説明

上記の4点を説明する必要があります。

1と2の評価はOETと似ていて、定型表現をいくつかインプットすれば乗り切る事ができる可能性が高いです。一方で3と4は毎回のステーションごとにイレギュラーになるので、前提となる臨床や英語知識が必要になります。

この他にも患者へのマネジメントやカウンセリング、心理的なケアなども評価基準に含まれることがあります。

以下に参考としてスコアシートの一例を共有します:

参照元:https://www.amc.org.au/wp-content/uploads/2021/03/Clinical-Examination-Specifications-2021.pdf 

AMC Clinicalの評価の特徴は、可能性の低い診断の場合でも必ず口頭で「なぜその診断の可能性が低いか?」を説明するという事が求められるという点です。

OETのように単に症状の説明をするだけでは評価されない傾向があるので注意が必要です。

主な対策方法

AMC Clinicalは実技試験のため、単に機械的に症状の説明をできるようになっても合格する可能性は極めて低いです。

症例ごとに適切な対応をする判断力・瞬発力が必要になり、これらを日本国内だけで対策することは非常に困難です。そのため、現地の生活に慣れ、ある程度英語の瞬発力や反射力を高めていく必要があると個人的に思っています。

その上で国内でできる対策と、オーストラリア現地でできる対策をご説明します。

国内でできる対策

繰り返しになりますが、瞬発力や反射といった運動能力を高めるためにはリアルな環境にイマージョン(英語環境に飛び込む)ことが不可欠です。

イマージョンは国内で働きながらオンライン英会話をしたり、ネイティブの友人や同僚と話しているだけでは実現できません。そのため、英会話の練習や臨床シーンのロール・プレイなどは国内で練習するにはあまり適切だと言えません。

それよりもむしろベースとなる部分に磨きをかけ、現地に行った時の対応力を磨いていくことが国内で対策する場合には効率的です。

具体的には、

  1. 伝わる英語の習得(発音の再現性向上)
  2. 医療語彙や背景知識のインプット

上記2点に焦点をあてることを個人的にオススメします。

「1. 伝わる英語の習得」は現地で学習するよりも、国内で学習した方が効率的です。日本人が躓くポイントを抑えて理論から音の再現を理解することが、再現性を高める上で重要になるからです。

日本にいる外国人は「日本人はこんな感じの英語を話す」という前提を理解した上で、私たちの英語を聞いてくれます。一方で、現地の人々は「あなたも英語が話せて当たり前」という前提の元コミュニケーションをするので、少しの違和感が伝わらないという結果を招くことになります。

そんな時に自己修正できる知識を身につけておくか否かは、現地で直面する壁を乗り越えるために重要なポイントになると考えています。

「2. 医療語彙や背景知識のインプット」に関して、覚えなきゃどうしようもないことは国内で覚えておいた方がいいでしょう。

知らない状態では反応する事ができません。反応ができないということは、それだけ学習機会が少なくなっていくということなので語彙などはあればあるだけ良いと思いインプットを継続すると良いと思っています。

ただ、辞書や単語帳などを見て単に “語彙単体” を覚えていくということはオススメしません。覚えるべきポイントは「音」と「文脈」です。

そこで効果的だと思うものが、海外の医療ドラマなどを字幕をつけて視聴し、分からない単語や表現を調べながらインプットをしていくという方法です。

英語に限らず言語学習は「CLIL」という学習方法が最も効果的だと考えられています。CLILとは、「英語を勉強する」のではなく「何かを学ぶ過程で英語を使う(その中で英語を覚える)」という学習方法です。

ドラマを観る(できれば楽しめるもの)という目的を達成するために英語を使う。こうすることで無理なく、英語のインプットを継続できるはずです。(もちろんドラマでなく、趣味に関する内容でも大丈夫です)

オーストラリアでできる対策

国内での学習がインプット中心になるのに対して、現地でできる対策は実際の反応精度を伸ばしていくことです。

そこでオススメなのが、オーストラリアの予備校が提供しているPreparation Courseに申し込むことです。現地で受講できるスクールで有名なのが、

  1. ARIMGSAS
  2. HEAL

という2つの医学生予備校です。

価格が4495AUD(ARIMGSASの場合)と割高な事がネックですが、同じ目標を持った仲間ができる点、試験問題など最新の情報が得られやすい点、から個人的にはオススメのオプションです。

日本国内でAMC Clinicalを対策している人はほとんどいないので学習が孤独になりがちですが、一緒に学べる仲間を持つ事で学習意欲を高い水準で維持する事ができます。

また、共通するトピック(この場合はAMC Clinicalの合格)があると異文化であってもコミュニケーションのきっかけとなり、相対的に英語を使用する機会が増えていきます。結果、より早く英語の対応力が伸び、試験に合格できる可能性も大きくUPします。

Workplace based assessment(WBA)

ここまでAMC Clinicalの対策についてまとめましたが、AMC Clinicalは合格率が20〜30%と非常に難しいテストです。受験生によっては、何度受験しても合格できないということもあり得ます。

そんな場合のオプションとして “Workpace Based Assessment (WBA)” という制度があります。これは AMC MCQ に合格している人を対象に、指定されている病院で臨床研修を受ける事で医師登録ができる制度です。

WBAに申し込む要件として以下の3つの資格を持っておく必要があります:

  1. AMC CAT MCQ試験に合格している
  2. “Limited Registration” を受けている
  3. 指定病院で役職を持つ

参照元:https://www.amc.org.au/workplace-based-assessment/wba-eligibility-and-how-to-apply/ 

受け入れてもらえる病院でポジションが空いているかどうかは運の要素が強いですが、申し込む事ができれば実際の現場経験にもなり非常に魅力的なオプションだと思います。

WBAプログラムを認可されている病院は、以下のURLにまとめられています:

参照元:Accredited WBA programs

まとめ

AMC Clinicalで求められるスキルは、状況に応じた判断力や対応力、そして適切にコミュニケーションが取れる英語力です。仕事をしながらこれらを身につけるためには、それ相応の学習時間の確保が必要になり、どのように毎日のスケジュールを組み立てるかが重要になります。

知識を問われるAMC MCQとは違い実際の運動能力が求められるため、個人の適正・得意不得意が如実に反映されるという事実が非常にシビアな試験です。

しかし、先程紹介したWBAのような別のオプションも用意されています。

一つの手段に固執するのではなく、現場を考慮した際の最適な手段を考えてみることも大切な要素かもしれません。

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