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MRCP PACESの概要と対策方法を紹介

イギリスで専門医を目指す医師にとって、避けては通れない関門があります。それは、英国王立内科医協会(Royal College of Physicians)のMRCP(Membership of the Royal College of Physicians)に合格をすることです。

MRCPは内科専門医試験の位置づけで、以下のステップで試験が進みます。

  1. MRCP Part 1(筆記試験)
  2. MRCP Part 2(筆記試験)
  3. MRCP PACES(実技試験)

3つのステップの中でも、最終試験のPACES(Practical Assessment of Clinical Examination Skills)は、最も難易度が高いと言われています。

今回は、そんなMRCP PACESの対策方法についてまとめていきます。

MRCP PACESの概要

MRCP PACESは、世界各地で受験ができます。わざわざイギリスに行く必要はなく、日本から近いところでは、香港、マレーシア、シンガポールなどで受験が可能です。

受験は年に2、3回実施されています。実施場所により、受験回数が異なります。受験費用は、イギリス国内で£698、国外ですと£1397であることが多いです。

この試験の目的は、専門研修で遭遇する可能性のある疾患について、受験者が理解し、実践的に管理できることを確認することです。そのため、PACESは対面式のOSCEスタイルの試験になっています。

試験内容の詳細

試験の内容についてです。まずは図で、感覚的に理解をしてみましょう:

各20分間の5つのステーションにわたり、受験者の臨床スキルを評価します。一部のステーションは、2つの10分間の試験に分けられており、全部で8人の患者の診療を行います。

各ステーションの間には5分間の休憩があり、それぞれ2人の試験官によって評価されます。

構成と内容

具体的に試験の構成と内容を確認していきます:

  1. 診察ステーション(4つ)

    診察時間:(6分間)主要な臓器系の1つについて臨床診察。

    口頭試問:(4分間)所見のまとめ / 考えられる診断 / 治療計画について試験官が質問。
  2. コミュニケーションステーション(2つ)

    全体の時間:10分間

    扱うトピック: 悪い知らせの伝え方 / 行動の変容 / 倫理的・法的ジレンマ など。
  3. コンサルテーションステーション(2つ)

    コンサル時間:(15分間)重点的な病歴聴取 / 焦点を絞った診察 / 考えられる診断と次のステップを患者に説明。

    口頭試問:(5分間)症例のまとめ / 鑑別診断 / 治療計画について質問。

PACESは、21世紀の医療に必要とされる多面的な医師の能力をより適切に評価することを目指しています。

そのため、各ステーションでは医学的知識だけでなく、コミュニケーション能力、診断スキル、患者中心のアプローチが重視されています。

最近の変更

医学教育の変化に対応して、2023年に新しい試験形式へと変更がありました。主な変更点は、以下の通りです:

  1. 旧Station 2(病歴聴取スキルの評価)が廃止
  2. 旧Station 4(コミュニケーションと倫理に関する面接、試験官との対話)が廃止
  3. 旧Station 5(7つのスキルを10分間で評価)が廃止
  4. 新たに2つの10分間のコミュニケーションを導入(観察のみ)
  5. 新たに2つの20分間のコンサルテーションを導入(7つのスキルを統合的に評価)

この新形式は、従来と同じ臨床スキルを評価しつつ、21世紀の医師に求められる能力をより適切に反映するよう、一部の試験内容が変更されています。

パンデミックの影響で、新形式の導入は遅れていましたが、2023年の第3回試験から導入されています。(※シンガポールの受験者は2024年初頭から新形式で受験)

試験の評価

PACESは7つのスキル(A-G)で評価されます。

スキルAは身体検査に焦点を当てており、ステーション1、3、5でテストされます。身体所見を特定するスキルBは、合格するのが最も難しいとされています。

スキルCは臨床コミュニケーションに関係し、ステーション2、4、5で評価されます。スキルDは鑑別診断を含み、ステーション1、2、3、5で評価されます。

スキルE(臨床判断力)、スキルFとG(患者の懸念に対処する能力および患者の福祉を維持する能力)は全てのステーションで評価されます。

試験官は、それぞれのスキルを「Satisfactory」、「Borderline」、または「Unsatisfactory」のいずれかで採点します。

マークシートには、試験官が判断を下す際に役立つ説明文が記載されています。以下が、公式のマークシートになります。

あるステーションでの成績は、次のステーションでの成績を必ずしも意味しないことを覚えておきましょう。つまり、前のステーションについて振り返るのではなく、5分間の休憩中に次のステーションに集中することをオススメします。

7つのスキル

評価対象の7つのスキルについて、詳しく見ていきましょう。

スキルA: 身体検査(ステーション1、3、5)

  • 身体検査を練習
  • 期待されるすべての領域を包括的かつ効率的にカバーすること

スキルB: 身体所見の特定(ステーション1、3、5)

  • 鋭い観察力を養うこと
  • 微妙な所見を特定し、その臨床的な意味を解釈する

スキルC: 臨床コミュニケーション(ステーション2、4、5)

  • 多様な患者シナリオを使い、コミュニケーションスキルを確認
  • 情報を明確かつ共感的に伝えることができる

スキルD: 鑑別診断(ステーション1、2、3、5)

  • 迅速かつ正確に鑑別診断を立てる練習をします。
  • 臨床的な推論を用いて選択肢を正当化する練習をします。

スキルE: 臨床判断力(全てのステーション)

  • ガイドラインやベストプラクティスを施し、臨床判断力を養う
  • 臨床シナリオに基づいて決定を下す

スキルF: 患者の懸念に対処する能力(全てのステーション)

  • 患者中心のケアに焦点
  • 患者の懸念に対応し、対話の中で快適さと安全を確保

スキルG: 患者の福祉を維持する能力(全てのステーション)

  • 患者の安全と快適さを最優先に考えたケアを提供
  • 患者とのコミュニケーションを通じて、常に患者のウェルビーイングを確保

これらのスキルと準備方法を理解し、実践することで、PACES試験での合格の可能性を高めることができます。

試験結果について

結果はオンラインで公表され、受験日から15日後に発表されます。結果の発表日は、王立内科医師会のウェブサイトで確認できます。

MRCP PACES試験に合格するためには、次の条件を満たす必要があります:

  • 172点中130点以上のスコアを獲得する
  • 全ての臨床技能において、最低スコアを満たしている

全体のスコアと各個別の臨床技能が合格基準を満たしていれば、あるステーション全体が不合格でもPACES試験に合格することが可能です。

結果は、提供されるマトリックスで要約されます。以下は、公式のサンプルマトリックスになります。

MRCP PACESの対策方法

PACESの対策は、基本的にオンラインコースがメインになります。実戦形式のテストですので、動画を中心に学習し、自らも実践できる機会があることが望ましいです。

1. Pastest’s

Pastest’sでは、125の患者ケースが用意されています。さらに、340以上PACES試験のビデオが含まれており、模範的な試験受験者によるベストプラクティスが示されています。テストされるトピックに関する必要な情報に効率的にアクセスできます。

Pastest’sはダウンロード可能なPDFを使用したロールプレイ素材も提供しています。また、試験候補者がその試験所見を提示するケースポッドキャストや、審査官による批評を聴くこともできます。

また、進捗状況を追跡するために、ダッシュボードでの主要な進捗データへのアクセスを提供し、各ステーションごとに、取り組みをモニターすることができます。

2. Quesmed

Quesmedの教材は、試験で遭遇するかもしれない臨床ビデオが100以上あり、専用の参考書も提供されています。これにより、何に直面するかを把握することができます。

MRCP資格を取得した医師たちに、準備に関するアドバイスやテクニックを聞くことが可能なのがQuesmedの特徴です。

3. SsAcademy

いわゆるインド系のサービスで、超格安です。全5つのステーション、32のモジュールを提供し、試験のすべての側面を網羅する包括的なカリキュラムを提供しています。200以上の臨床ケース、および100の症例を提供しており、さまざまな医療シナリオに対する洞察を得ることができます。

Dr. Sahaによるメンターシップでは、専門的な指導と戦略が提供されます。500時間以上のビデオ講義で必須のトピックを包括的に学び、PACES試験の習得に向けた充実した学習を提供しています。

まとめ

以上が、MRCP PACESの概要と対策の紹介でした。

IMGのPACESの合格率は、たったの42%です。Part1や2の合格率が6-7割であることを考慮すると難しいことが分かります。

受験費用も高額のため、しっかり対策をした上で受験日を決めると良いでしょう。

最後まで読んでいただきありがとうございました。何かご質問などあればお気軽にご連絡ください。

この記事を執筆するにあたって、参考にした1次情報は以下のリンクから確認ができます。

  1. https://www.thefederation.uk/examinations/paces/exam-dates-and-fees
  2. https://www.thefederation.uk/examinations/paces/marksheets
  3. https://www.thefederation.uk/document/paces-marksheets-sample-2023
  4. https://www.thefederation.uk/sites/default/files/MRCP%28UK%29%20PACES%2023-2%20feedback%20report.pdf

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